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 <心に残った文章> 
泣いても仕方がないことだ。父を追い詰めたのは、母と自分だ。
だけど、意志に反して嗚咽が喉からせり上がってくる。
息を止め、さとるは声を出さずに泣いた。小さい頃は父が好きだった。
整髪料の匂いと、父の背広のざらざらした手触りがとても好きだった。
さとる(娘)が父を愛していたから、父もさとるを愛してくれた。
どちらが先に、その愛情をなくしたのかは、鶏と卵のようなものだ。
気がついたら、愛してくれないのなら愛せないということになっていた。

          「群青の夜の羽毛布」 山本文緒さん  

依存・束縛・愛憎・・・ そして根源にある「愛を乞う心」 色々考えさせられた作品です。